SPECIAL INTERVIEW

ホテルをつくるレシピ

アロフト東京銀座

アートとミュージックをテーマにした、マリオット系列の次世代型ライフスタイルホテルが日本初上陸。東京メトロほか各線東銀座駅から徒歩2分、銀座エリアにアクセスのいい場所に2020年10月1日オープンした。モノトーンをベースにしたスタンダードの客室は、GINZAなどの文字をグラィック化した壁紙などが印象的。料飲施設は、インダストリアル感ある内装のオールデイダイニング「The WAREHOUSE」、ネオ銀座を感じられる「W XYZ Bar」、ドリンクと軽食が楽しめるルーフトップバー「Roof Dogs」の直営3店舗。

  1. ロールスクリーンの遮光生地には銀座の街並みをモチーフにしたモダンアートをプリント
  2. 遮光生地を左右の「ガイドレール」に挿通することによって優れた遮光性能を発揮する
  3. 「 アロフトスイート」はシックな濃色の遮光生地で、室内のポップなアートが鮮やかに映える

「SDGs」が問われる時代
環境への配慮が選ばれる商材に

2022年4月施行の「プラスチック資源循環促進法」により、ホテル業は特に歯ブラシやバスアメニティに対する脱プラ対策に取り組まなければならない状況です。建材や表に見えない部分でのSDGsへの取り組みも施設設計では重要な要素になりつつあるようですが。

紙透 それは顕著ですね。オーナーからは初期の段階で、カーボンニュートラルやSDGs視点の素材を使用してほしいと言われます。サプライヤーが適切な排水処理をしているか、省エネに積極的かとか。エコ視点だけでなく地元企業や地元素材を積極的に使おうという動きも顕著です。調達会社として独自にできることとしては小さなことですが、見積もりの際にSDGsの取り組みに関するアンケートを実施し、各社の方向性を確認するようにしています。

芝地 弊社は、ブラインドやロールスクリーンなど窓まわり商品の省エネ性能に業界でいち早く着目し、遮熱、断熱、 昼光利用、電子制御などの技術を培ってきました。また、生産工程においても、リサイクル推進、CO2排出量の削減などに継続的に取り組んでいます。2021年はメインの生産拠点が所在する神奈川県の「かながわSDGs パートナー」にも登録されました。

紙透 大手は当たり前になってきているかもしれませんが、極端な話をすると職人さん1人といった小規模な取引先もあります。1万円でも何億円という仕事でも、ここまでやらないと今は選ばれないんだという意識改革になれば。社員の間でも「ここまで意識しなければならないんだ」という気づきになっています。だからと言って、やみくもにエコ素材を使えばいいというわけでもない。ホテルでは品質はもちろんのこと居心地や使い心地も重要です。

芝地 目の肥えたゲストが滞在するラグジュアリーホテルともなれば、自ずと要求事項は高度になりますね。竹素材のブラインドや再生ポリエステルを使用したロールスクリーンの生地など、エココンシャスな商品もご用意していますが、今後もサステナブルで省エネという切り口を盛り込んだ提案をしていきたいと思っています。

ザ・リッツ・カールトン日光

栃木県で初となるラグジュアリーホテルとして2020年7月15日開業。日本国内では同ブランド5カ所目、温泉が備わるホテルとしてはブランド初となる。自然豊かな日光国立公園内、中禅寺湖や男体山を望む絶好のロケーション、約1万9000㎡の敷地にメイン棟、レイク棟、マウンテン棟の3棟が建ち、客室は277㎡の「ザ・リッツ・カールトン スイート」1室を含む94室。「西洋と日本の建築デザイン、そして奥日光の自然と調和した邸宅」が館内のデザインコンセプト。客室は和の要素を取り入れ、ナチュラルカラーで統一されたくつろぎの空間。日光湯元温泉の源泉を引くスパ施設もある。料飲施設は、地元・栃木産の豊かな食材を取り入れた料理が味わえる二つのレストラン(日本料理、ウェスタン)とラウンジ、バーも完備。

  1. 洋食ダイニング「レークハウス」には電動ハニカムスクリーンを設置。リモート操作でオペレーション効率も向上
  2. 「日本料理 by ザ・リッツ・カールトン日光」にも電動ハニカムスクリーンを採用。昇降操作用のコードが残らないのも電動の利点

ホテルの空間づくりに携わる両社から見た、ホテル業界の今後の展望をお聞かせください。

紙透 私は日本の旅館が大好きで、これをもっと高めたいと考えています。これまで約18年間、主に外資系の仕事に携わってきていて感じることですが、欧米人はホスピタリティに関する要求が高いので、日本の宿のように夕食の時間が決まっていて、夜のエンタメもなく、1泊2食の囲い込みといった宿泊スタイルは、フレキシブルではないと感じるものです。彼らは、ラウンジ、バーを作って、互いのホテルを行き来する。みんなで楽しめるようなエンターテインメント性のある、外資系スタイルのライフスタイルをうまく盛り込めば街が変わります。さらに、運営方法も少し変えるだけで、外国人富裕層の長期滞在も容易にできると思うのです。大がかりな改装や改築ではなく、温泉街の宿のよさを生かしながら、なるべくコストをかけずにリノベーションしていくお手伝いをすでに始めています。アメニティボックスや寝具ひとつというボトムから少しずつ変え、その次に内装、建築、設備というボトムアップの再生。同じ予算でもより素敵なアイテムがありますという提案からスタートしたい。今後、宿泊施設は複雑化するニーズに合わせてさらに多様化していくと思います。

芝地 環境への配慮を取り入れながらデザインと機能の両立ができる商品を提案していきたいと思います。旅館やホテルの和モダンな客室で導入事例があるように、ブラックアウトのロールスクリーンと障子を合わせたデザインも定着しつつあります。

紙透 ブラックアウトのロールスクリーンと障子の相性はいいと思いますね。まだまだ様々な可能性がありそうですね。宿泊主体型ホテルはテクノロジーに頼ってもいいけれど、ラグジュアリーはよりシンプルにまた戻ってきている。シンプルだけど居心地がよく最低限の上質なものがあればいい。ラグジュアリーになればなるほどテクノロジーに頼らずにわかりやすいスイッチ、ナチュラルなものが求められています。そして、私は自分でホテルを立ち上げたいという目標を、まだ諦めたわけではなく…理想の宿づくりという野望を胸に、妥協なきホテルづくりに携わっていきたいと思います。

MEMO

窓まわりや間仕切り専門企業として常に納品先のニーズに応えてきたニチベイ。近年活況となったホテル開発が契機となり、遮光性に優れたガイドレール式ロールスクリーンなどの需要が高まり、ホテル市場への契約案件が2015年から急増している。一方、備品の調達選定を行なうクロスリンクの「ユーザビリティやオーナーの意向を踏まえながら空間を仕上げていく」というポリシーと、ニチベイのスタンスが合致。両社は、多くの外資系ラグジュアリーを含むホテル案件に携わっている。クロスリンク×ニチベイが抱くホテルづくりへの想いに迫った。

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アロフト東京銀座

ザ・リッツ・カールトン日光

※この記事は、「ホテルをつくるレシピ│vol 2 都市と未来」に掲載された原稿を再構成したものです。

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