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ホーム>伝統建築のエッセンスをまとったバーチカルブラインドが映えるモダンハウス

伝統建築のエッセンスをまとった
バーチカルブラインドが映えるモダンハウス

伝統建築を現代の暮らしに融合させた住宅を数多く手掛ける建築家の杉本龍彦さん。先日完成した「西原の家」も、モダンでありながら伝統建築のエッセンスが感じられます。
今回は杉本さんに「西原の家」を案内していただきながら、窓まわりアイテムが空間にもたらす効果についてうかがいました。

スキップフロアと大きな窓で光と風が行き渡る住まい



閑静な住宅街の坂道を下っていくと、黒いガルバリウム鋼板の外壁が目を引く3階建ての住宅が現れます。設計したのは建築家の杉本龍彦さん。共通の知人を通じて、新居の相談を受けたのがきっかけだったと言います。

敷地東側には街を見通せる眺めの良い坂道、西側には豊かな緑が広がります。杉本さんは、この恵まれた環境と敷地の高低差を活かすべく、ダイナミックなスキップフロアを提案。中央の大きな吹抜けと階段を配して、上から下、西から東に風と光が家中に行き渡りつつ、視線の抜けとつながりによって開放感のある住まいが完成しました。


1階から3階を緩やかにつなぐ階段。南面に大きな窓があることで、部屋の隅々まで光が行き渡ります


  • 「『西原の家』は伝統建築の要素を含みながら、お施主さまのお好きなモダン建築としてまとまるように設計しました。伝統建築はその土地の気候風土に調和させるため自然な形態をしています。日本の場合、夏は高温多湿ですから軒や庇で日射を遮蔽しつつ、風が抜けるつくりが良いですし、冬は気温が下がるので太陽の光が採り込めた方が良い。この住まいもいかに風と光を導けるかを留意しました。
    さらに建築ボリュームや法規制、隣家との距離といった厳しい条件をいかにクリアするか、そのうえで律動・均衡のとれた形をどのように生み出すのかも大切なポイントでした」
  • 「お施主さまと一緒に家づくりをするのが何よりも楽しい」と話す建築家の杉本龍彦さん

クランク窓には連続性を活かせるバーチカルブラインド



青々とした木々が見える西側のリビングの窓を開けると、みずみずしく心地良い空気が室内に流れ込みます。葉の色が反射して緑色に見えるバーチカルブラインド、風で揺れる葉の影が映る床……。まるで森の中にいるかのような穏やかで心落ち着く空間です。ソファに腰掛け、左側に目を向けると瀟洒な都会の風景が広がります。東西で眺めがガラリと異なるのもこの住まいの魅力のひとつです。

大きく開けられた掃き出し窓には、バーチカルブラインド「アルペジオ」のバックレーススタイルを取り付け、日射と視線のコントロールを細やかに行えるようにしました。バックレース生地のおかげで、眺望を楽しめながらもプライバシーがしっかり守れます。

「東西面は南面と比べると太陽高度が低くなるため、よこ型ブラインドよりもバーチカルブラインドの方が光の調節がしやすくなります。敷地周辺は3階建ての建物も多く、視線のコントロールという意味でも、水平方向に動かせる方が室内の様子も見えにくくなって良いですね」


  • 外からの視線を遮りつつ、眺望が楽しめる「バックレーススタイル」を採用。建物が持つ抜けや広がりを最大限活かせます

  • 「1・2階の庇と方立、手摺、外壁、インナーバルコニーをバランス良く配置し、窓が建築の形と一体になった構成美となるよう配慮しました」と杉本さん



  • 連続した3面の窓の左右が「バックレーススタイル」、中央のFIX窓は「シングルスタイル ミニマルウエイト」。異なる機種だと感じないほど自然な納まりです

  • 東西の窓はどちらも“クランク窓”が用いられています。クランク窓とは、つづら折りに連ねた窓のことで、バーチカルブラインドの設置には少し工夫が必要です。

    本来、同じ仕様の窓まわりアイテムを同じ取り付け高さで揃えるのが一般的です。けれども、中央のFIX窓は真横から眺めることになるため、掃き出し窓に採用した「バックレーススタイル」だと不自然にせり出て見えてしまいます。
    そこで、FIX窓には奥行きがコンパクトで、ルーバーの仕立てが「バックレーススタイル」と同じ「シングルスタイル ミニマルウエイト」を窓枠の内側に設置。どちらもルーバー(はね)の重なり代が2cmなので、異なる機種でも違和感なく美しく納まります。

伝統建築のエッセンスが感じられる窓辺に



キッチン横には室内干しスペースがしつらえてあり、天候や時間を気にすることなく洗濯物が干せます。キッチンとの境には調光ロールスクリーン「ハナリ」を設置し、洗濯物が目に触れないようにしました。採光した状態でも洗濯物が見えにくいのはもちろん、室内が暗くなりません。
調光ロールスクリーン「ハナリ」は、繊細な2枚のレースの間に布のスラット(はね)を渡した立体構造のスクリーンです。ブラインドのように調光と外からの視線をコントロールでき、ロールスクリーンのようにすっきりと巻き上げられます。



  • 「ダイニングキッチンの境にはどのようなアイテムが適しているのかをお施主様と幾度も検討を重ね、たどり着いたのが『ハナリ』です。ショールームで実物を確認すると、レースとスラット(はね)生地の雰囲気がとても繊細で優しいと感じました。すぐに家全体の雰囲気やバーチカルブラインドとの相性が良いと気づきましたね」

    正面に立つと、バーチカルブラインドの垂直ラインと調光ロールスクリーンの水平ラインが合わさって格子に見えます。ここにも伝統建築のエッセンスが息づいています。
  • バーチカルブラインドと調光ロールスクリーンでできた格子は柔和な佇まい。ふんわりとした光を室内に届けます

機能的かつ美しい空間を演出する窓まわりアイテム



杉本さん曰く、窓によって求められる快適性が大きく異なるため、窓まわりアイテムは慎重に選定したそうです。

「『西原の家』では、シンプルで無駄のない空間とモダンなインテリアによる美を追求すべく、窓まわりのアイテムはその美に調和することが必須でした。この課題に対して『アルペジオ』と『ハナリ』はモダンな雰囲気にマッチしつつ、窓まわりに新たな空間を現わしてくれました。森のような風景・環境との境界になる西側窓、吹抜けから中心へ光を導く重要な南側窓、道路・住宅街とのプライバシーを調整する東側窓に、機能的かつ美しい空間を演出してくれたのです。
窓は住まいに欠かせない要素である暮らしやすさと美しさに加えて、内外のつながりや四季・天候・時間によって変化に富んだ空間を生み出します。周囲の環境、建築に合った窓まわりアイテムを選定することが、暮らしの質を高める上でとても大切だと思います」


  • 杉本龍彦(すぎもと たつひこ)さん 「杉本龍彦建築設計」主宰。日本の自然や風土から生まれた伝統建築を現代の暮らしに融合させた建築を数多く設計。東京建築士会環境委員会委員、青山製図専門学校講師を兼任。共著書に「窓がわかる本 設計のアイデア32」「建築用語図鑑 アジア篇」など多数。

written by
なるほどブラインド編集部

2024.10.01 更新

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