メカモノ インテリアファブリックス講座 [織物編]
洋服、ラグやソファーの張地、寝具など、私たちの身の回りには様々な『生地』があります。生地と言っても厚手のものから薄手のもの、同じような厚みなのに雰囲気、表情が異なるものなど、私たちの身近にあるものなのに、よくわからないことも多い生地。今回は少し専門的ですが、ロールスクリーンやバーチカルブラインド、プリーツスクリーンなど、『メカモノ』と言われる窓まわり商品の生地を例に、インテリアに使われる生地=インテリアファブリックスについてご紹介していきます。まずは織物編です。
織物とは
メカモノに使われる生地には「織物(おりもの)」と「編物(あみもの)」、「不織布(ふしょくふ)」があります。
その中でも織物とは、織機(しょっき)によってタテ糸とヨコ糸を組み合わせて交錯させ、平面状に仕上げたものです。織物組織の基礎は、三原組織(平織・プレーン、綾織・ツイル、朱子織・サテン)に区分され、織物の多くは、この三原組織とその変化組織によって作られています。
平織
平織(ひらおり・プレーン)とは、三原組織の一つで、タテ糸とヨコ糸が交互に交錯して組織した基本的な織りです。交錯点が多いため丈夫なのが特徴でメカモノ生地では最も多く採用されています。
ファッションアイテムで一度は聞いたことがある「シャンブレー」は、身近な平織組織の生地の一つです。タテ糸とヨコ糸に異なる色糸を組みあわせ平織りに織ることで、光の当たり方によって玉虫色のように見え方が変わったり、風合いに奥行きを与え上品な印象になります。
同じようにトップス・シャツで聞いたことがある「オックスフォード」は、平織の変化組織です。タテ糸とヨコ糸に2本以上の糸を束ねて平織にする織り方で、織目が荒くしっかりと見えるため、カジュアルな印象に仕上がります。
このように、平織はシンプルな織り組織だからこそ、糸の特徴や、太さの違いで様々なテキスタイルの表情を生み出すことができます。
- ニチベイのロールスクリーン「ソフィー」、バーチカルブラインド「アルペジオ」の共通生地『エルデ』は、この平織組織を使った代表的な生地になります。一見フラットでシンプルですが、リネンのような繊細な質感が上質な洗練感を醸し出す生地です。
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- また、『ルオム』も平織組織を使った生地になります。ロールスクリーン「ソフィー」、バーチカルブラインド「アルペジオ」、プリーツスクリーン「もなみ」の共通生地で、リサイクルポリエステル糸を使用したグリーン購入法適合のECO素材生地です。
麻調の糸を使った、ザックリしたナチュラルな印象の生地で、同じ平織でも先ほど紹介した『エルデ』とは対照的な雰囲気に仕上げています。
綾織
綾織(あやおり・ツイル)とは、三原組織の一つで、タテ糸を2本もしく3本ずつ浮かせ、1本をヨコ糸にくぐらせた組織です。糸の交錯が斜めの線として現れ、畝(うね)として見える組織です。
綾織で身近な生地は「デニム」です。平織組織にくらべ生地自体の耐久性は劣るものの、交錯点が少ないため光沢があり、厚地でしわになりにくくしなやかな生地ができるため、ジーンズをはじめ、チノパンなど作業服で用いられることが多い織り組織です。
また、ジャケットやコートで聞き馴染みがある「ヘリンボーン」は、右上がりの綾織(右綾)と左上がりの綾織(左綾)の交互に組み合わせ、杉の葉のような織り柄が現れる織組織です。
- ロールスクリーン「ソフィー」の『ケルム』という生地は、「ヘリンボーン織り」をイメージし変化組織で表現した生地です。ほのかな光沢と陰影が、シャープな印象の生地に仕上がっています。
品の良いクラシカルな洋服やファッションアイテムから受ける印象と同じように、『ケルム』を取り入れた窓まわりは上質でスマートな空間を演出します。 -
朱子織
朱子織(しゅすおり・サテン)とは、三原組織の一つで、タテ・ヨコ5本以上の糸でつくられた組織で、タテ糸またはヨコ糸のどちらかを布面に長く浮かせた織りです。交錯点が少なく目立たないので、柔らかく光沢がある生地になります。
シルク(絹)のように細いフィラメント(長繊維)糸を使った光沢の強いサテンはフォーマルウェアや、ブラウスなどドレープの美しさや落ち感を出したい服、すべりや肌触りを良くするための裏地などに使われます。
ロールスクリーンなどで採用される遮光生地は、織り遮光とバックコート遮光、ラミネート遮光に分かれますが、織り遮光の場合は両面、もしくは表裏のどちらかに朱子織の組織が用いられます。
遮光生地に朱子織組織が使われる理由は2つ。交錯点の少ない組織のため糸密度を上げることができ、織組織の隙間を小さくできます。そして、遮光性を高めるためにヨコ糸に織り込んだ、黒い糸をタテ糸で覆い隠すことで、美しい生地意匠を保つことができるためです。
ロールスクリーン「ソフィー」、バーチカルブラインド「アルペジオ」、プリーツスクリーン「もなみ」の共通生地である織り遮光の『クルル』は、ランダムに糸を浮き沈みさせながら、ザックリとしたナチュラルな風合いに仕上げた遮光生地。ザックリした織物は本来光を通しやすい組織になりますが、裏面が朱子織りの組織になっていることで遮光機能を保っています。
二重織
三原組織の組み合わせによって生まれる織物の中に、ロールスクリーンなどのメカモノ商品で人気の生地の織り方、二重織(にじゅうおり)があります。二重織は、織組織が二重になっているものです。表と裏に出る糸の色や柄を変えることでリバーシブルに使うことができたり、様々な風合いを遮光生地で表現したり、カーテンや着物で見ることができる「風通(ふうつう)織り」もこの二重織で織られています。
ロールスクリーン「ソフィー」、バーチカルブラインド「アルペジオ」共通の、ベーシックな生地『ラフィー』はザックリとした織り感が特徴です。朱子織で紹介した遮光生地『クルル』同様、ザックリした織物は透けやすくなりますが、『ラフィー』は二重織の特性を生かし、裏面を目の詰まった組織に仕上げることで、表地はザックリでもシークレット性を確保し、窓まわりからのプライバシーを守る機能を保ったファブリックに仕上げています。
まとめ
2024.10.01 公開
ロールスクリーンやバーチカルブラインド、プリーツスクリーンなどの「メカモノ」商品は、生地の風合いや表情をスクリーン全体で表現するため、織り組織や糸の種類の工夫、染色の工夫で様々な表情を楽しめるようこだわっています。 インテリアに合う意匠や、カラー、機能性はもちろん、テキスタイルのもつ豊かな表情も楽しんでみてはいかがでしょうか。