人とねこが楽しく暮らすために。
“ねこ目線”で考えた窓まわり
一級建築士でありながら、家庭動物住環境研究家として人と動物、家族全員が心地良く暮らせるように多岐にわたって活躍されている金巻とも子さん。ご自身も愛猫家で、2匹のねこたちと暮らしています。
今回は、金巻さんのご自宅にお伺いして、ねことの暮らしや窓まわりアイテムの選び方について教えていただきました。
住まいと動物の専門家である金巻さん
金巻さんは幅広く活躍されていますが、どのような仕事をされているのですか?
メインは住宅設計をしています。新築よりもリノベーションが多いですね。ねこカフェや動物病院の設計もしています。あとは、マンションのコンサルタントやペット向けプロダクトの監修、動物との暮らしでお悩みの方へ住まいの改善指導を行なっています。
相談も受けていらっしゃるんですね。
獣医さんやペットシッターさんからのご紹介で、相談にいらっしゃいます。吠え癖が酷くて退去を迫られているといった、緊急を要する案件も多いです。
動物たちの困った行動には必ず理由があります。暮らし方や家具のレイアウトを見直すだけで改善するケースも意外とたくさんあるんですよ。
どうして動物関係の仕事に携わるようになったのですか?
大学卒業後、大手建設会社に就職してマンションの企画を担当していました。当時はペット可の物件はあまりなかったものの、区分所有法の改正により、ペットを飼えるマンションが急増したんです。これに付随して増えた飼育トラブルを解決すべく、建築的な対応からいぬ・ねこの行動学について調べるようになりました。
その後、得た知識や情報を活かして、住民のサポートやアドバイス、管理規約改正や飼育細則作成のお手伝いをはじめたんです。その様子を見ていた大学の教授方に「いつも話している内容を学会で発表してほしい」と声をかけていただき、ペットと暮らしに関する講演活動をするようになりました。
飼い主が“ラクに楽しく過ごす”ことが動物のためになる
ウェブサイトに「犬猫のために、必要なものを過不足なく」と記載されていましたよね。不足しているのはいけないはもちろん、多くてもいけないのですか?
たとえば、ねこのために家のあらゆる場所にステップを造作するとします。つくったら、掃除をしなくてはならず、人間の負担が増えてしまいますよね。それに、掃除のやり残しがあると、通路が滑りやすくなって、ねこが転落する危険があります。
ねこを取り巻く環境の8割は人です。飼い主がストレスを抱えていると、彼らにとって暮らしづらい環境になります。飼い主が家事やねこのお世話をラクに楽しくできる住まいであれば、人も動物もしあわせに暮らせますよ。
動物たちが心地よく暮らすためには、人間がストレスなく過ごすことが大事なんですね。
いつも、相談に来られる方に「あなたがラクをすることは、彼らのためになるんですよ」とお伝えしています。飼い主は「予測可能でいつも機嫌の良い人」であることがとても重要です。そうすると、動物はストレスを感じなくなり、家の中を傷つけたり、汚したりする行動は自然と減っていきます。
また、室内飼育ですと「壁が傷つくから左官壁はダメ」、「観葉植物は置いてはいけない」と言われますよね。ダメだというのは簡単ですが、諦めるのではなく、どうしたら採用できるのか考えてみると良いですね。ねこが喜ぶ爪とぎを、ねこが必要としている場所に置いてあげるなど、彼らの要求を満たす整備で行動を誘導することも大切です。
バーチカルブラインド×ハニカムスクリーンで人もねこも快適に
金巻さんのお宅は最近、ローマンシェードから新しい窓まわりアイテムに変えたと伺いました。
ここに越してきた当時は、ローマンシェードしか選択肢がありませんでした。しかし、ドレープを上げた際にできる生地の溜まりが、ねこにはハンモックに見えるようで、中に入ってしまい困っていました。近づけないようにキャットタワーの向きを変えて対策をしていましたが、抜本的に解決した訳ではありません。また、ヒモ類はかじりやすく、誤飲を誘発するおそれがあり、裏側に露出したコードも気になっていました。
そんなとき、下部にコードのないバーチカルブラインドがあるのを知り、替えることにしました。
けれども、ここは高層階で日当たりが良く、バルコニーからの熱気がすごくて。夏の暑さを乗り切れるように、断熱性に優れたハニカムスクリーンも一緒に設置しました。
ねこは開放的というよりかは「家政婦は見た!」のように、覗き見る状態が好きなんです。自分の姿を隠せる安全な場所で、外の様子がうかがえるバーチカルブラインドは、ねこにとって良いアイテムだと思います。水拭きできる生地を選んだので、汚れてもすぐに拭けて便利です。
ねこが安心して窓辺で過ごせる環境に整えていく
ねこにとって窓辺はどのような場所ですか?
ねこにとって窓はテレビのようなものです。普段はあまり見ませんが、退屈なときに外を眺めます。だから、外出する際は窓まわりアイテムを少し開けてあげると良いですよ。
あと、外からの刺激を感じとれる唯一の場所でもあります。窓辺で季節の変化を感じているので、なるべく空気の流れも取り入れたいですね。
ねこを飼っているお宅が窓まわりアイテムを選ぶ上で何かポイントはありますか?
ねこが誤ってコードを飲み込んでしまうと大変危険です。必ずコードが露出していないアイテムを選んでいただきたいですね。
また、白いねこは紫外線によって皮膚がんを発症する可能性があります。日光浴はさせてあげたいものの、直射日光は遮らなくてはなりません。窓まわりアイテムを活用して、光をやわらかくすることが大切です。季節や時間帯によって光の調節できるとおすすめです。
- 金巻とも子さん 「かねまき・こくぼ空間工房」主宰。一級建築士、博士(工学)、東京都動物愛護推進員、家庭動物住環境研究家として活動。住宅密集地・集合住宅における飼育問題をライフワークとしている。建築学と動物生活環境学で教鞭をとりながら、家庭動物に関する新しい情報や、家族全員の心と体に健康な家づくりや住まい方をアドバイスしている。
Photo by Akiko Osaki Written by なるほどブラインド編集部
2024.7.5 公開