“透明な壁”とロールスクリーンで
家族も街もつなぐ家
駅から住宅街へと歩いていくと、ガラス張りの建物が見えてきます。ここは建築家の関本竜太さんの自宅兼事務所。空とつながるかのような大きな窓にはロールスクリーンと調光ロールスクリーンを設置し、眺望や採光を享受しながらプライバシーにも配慮しています。
関本さんにご自宅を案内していただきながら、設計や窓へのこだわりを伺いました。
家族に対しても地域に対して開かれた自邸
1階は関本さんが主宰する建築設計事務所「リオタデザイン」、2階はご自宅、3階はお母様の住まいになっている関本邸。程良い距離感を保ちながらも、緑豊かな中庭を介しておたがいの気配が感じられる二世帯住宅です。自邸の設計はどのように行われたのでしょうか?
- 「我々の世帯とは住まいを分けてほしいという母の意向があり、世帯ごとに階を分けることは早々に決まりました。しかし、全く干渉し合わない住宅なら、同じマンションの別々の部屋で暮らすのと変わりません。他人が立てる音は耳に障るけれど、家族の生活音は気になりませんし、元気にしているのだなと安心しますよね。それならば、中庭をシェアしながら気配やコミュニケーションが取れる家にしようと思い、中庭のある家にしました。」
そこで、今までの中庭の概念を覆そうと挑戦したのが、全面ガラスを用いた道路側の特徴的なファサードです。 -
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- 「手段として中庭を作るけれど、“自分は外に対して閉じないぞ”と意思表示として、道路側も中庭に面している部分も全てガラスにし、この家を「OPENFLAT」と名付けました。
二世帯の家族の関係性や住まいの機能性は普遍的に解決しておきつつ、外に対して全面的に開くことにこだわりました。」
「中庭にいた時に『お父さん、ここって夜光っている家だよね』と家の前で親子が話しているのが聞こえてきたんです。それが何よりも嬉しくて。暗い夜道にオレンジ色に光る家があると安心感もあるし、目印にもなりますよね。子供目線にはこの家が街のアイコン的な存在になっていると知り、外に開くデザインにして良かったと思いました。」
家族の団らんが見える窓、視線が広がる窓
フィンランドの建築に惹かれ、現地の設計事務所に勤めていた関本さん。北欧の街で見た窓辺が今も心に焼き付いているそうです。
「夜道を歩いていた時に、窓から老夫婦が食事をしている様子が見えたんです。天井からは北欧のペンダントライトが下がり、食卓を優しく灯していて……。その幸せに溢れた家族団らんの光景が未だに忘れられません。だから、僕が設計した住宅にはダイニングに大きい窓があり、北欧照明が下がっています。家族団らんの温かな雰囲気が外を歩いている方にも共有できたら良いですね。」
関本さんが設計される住宅は大小さまざまな窓がふんだんに配されています。どのように窓の配置を決定しているのでしょうか?
- 「僕は目線の先が壁だと行き詰まった感じがして嫌なんです。廊下の突当たりに窓がある、階段を上がった先に窓がある、ドアを開けたら窓がある、見上げたら窓がある……。とにかく目線の先が止まらないように窓を配置しています。
僕にとって窓は、透明の壁、または光の壁のような感覚です。日中はプライバシーを保護しつつ透明の壁感を出すために、ロールスクリーンなどのアイテムを採用しています。とくに調光ロールスクリーンはプライバシー対策をしつつ光の壁になりますし、巻き上げてしまえば本来の透明の壁を楽しめるので気に入っています。」 -
ロールスクリーンの納まりを工夫して窓を最大限活かす
お施主さんにロールスクリーンをよく提案しているという関本さん。光や景色を最大限採り入れられるよう、窓まわりアイテムの取り付け方にもこだわられています。
「せっかくフルハイトの窓にしても、一部がロールスクリーンの巻き取り部分にふさがれてしまうのは悲しいですよね。そのため、窓まわりアイテムは窓の上に納められるような設えにしています。高所の電動ロールスクリーンや小窓も開口部を狭めないように枠内付けではなく正面付けにしていますね。小さい窓は、枠内にロールスクリーンをつけてしまうと、窓の意味がなくなってしまうので、必ず正面に設置しています。」
まとめ
- 関本竜太(りょうた)さん 「株式会社リオタデザイン」代表。日本建築家協会(JIA)会員、北欧建築・デザイン協会(SADI)理事。ヘルシンキ工科大学(現アールト大学)に留学経験があり、北欧建築に造詣が深い。
written by なるほどブラインド編集部
2024.06.14 更新
家族だけで住まうのではなく、外とのつながりを意識すると、暮らしがもっと豊かになります。どうしても外からの視線が気になる方はロールスクリーンなどの窓まわりアイテムを活用して、外との距離感を調整してみてくださいね。