居心地アップの秘密は窓まわり。
暑さと視線を解消したくつろげるカフェ
カフェの窓から差し込む強い陽射しや、外からの視線が気になったことはありませんか?
千葉県佐倉市にある〈CAFE SUCRE(カフェシュクル)〉も、そんな窓まわりの問題を抱えていました。
これまで開放感を重視し、窓には何も付けていませんでしたが、お客さまに快適に過ごしていただけるよう、新たに窓まわりアイテムを導入。明るさや庭の眺めはそのままに、より居心地のよい空間へと生まれ変わりました。
今回は、空間デザイナーでもあるオーナーの平野智美さんに選び方や設置後の変化についてうかがいました。
寝室のようにのんびりできるカフェ

シュクルは、焼きたてのワッフルやシナモンロールなどが楽しめる北欧テイストのカフェです。2006年の開店以来、地域の方々に愛されています。
店舗デザインは、オーナーの平野さんが自ら手がけました。コンセプトは、「スウェーデン女性の寝室」。北欧から取り寄せたアクセントクロスと木製のトリプルサッシが、ぬくもりと女性らしいやさしい雰囲気をつくり出しています。
店内はどこにいても心地よく過ごせるように工夫されていて、店舗奥にあるドアを開けると、季節の花や緑で彩られた庭が広がります。その奥にはドギールームもあり、愛犬と一緒にカフェタイムを過ごせます。
「一人暮らしのスウェーデン女性が朝目覚めて、やわらかな光に満ちたテラスへと足を運ぶ。そんなワンシーンを思い描きながら、誰もが自宅の寝室のように肩の力を抜いて、のんびりとくつろげる空間に仕上げました」
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植物がのびのびと育つ庭。取り巻く植栽が訪れる人の心を癒す
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フレンチモダン風のドギールーム。まるで海外に来たかのような可憐な空間が広がる
眺望はそのままに、暑さと眩しさをカット

大きなソファのある席は、シュクルで一番人気の場所です。しかし、夏冬問わず眩しさや暑さから敬遠されることも。スタッフから「お客さまが暑そうだから何か付けてほしい」という声もあり、遮熱生地のロールスクリーンを設置しました。
採用されたのは、シースルー生地でありながら高い遮熱性能を誇る〈フォスキー遮熱〉。これまで通り庭を見せながら、暑さと眩しさを軽減できます。
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〈フォスキー遮熱〉は、特殊な繊維を使用し効率よく日射熱を反射しつつ、眺望性も確保できるシースルー生地
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外から中の様子は見えないため、周囲の視線も気にせずに過ごせる
「庭を隠したくなかったので、透け感のある遮熱生地を探していました。しっかりとした透け感とボーダー柄がここの雰囲気に合うと思い、〈フォスキー遮熱〉を採用しました」
実際に設置して、体感温度の違いに驚いたと話す平野さん。
「温度が全然違いますね。以前は、日が当たっていると長く座っていられませんでしたが、ロールスクリーンを付けてからはとても快適です。遮熱生地だけで、こんなにも暑さが軽減できるなんて驚きました。お客さまが喜んでくださっているとスタッフからも好評です」
スクリーンを上げたときと下げたときでは、座席の日当たりが異なるのがよく分かる。それでいて、庭の眺めは遮らない
気になる視線や景色は、ふんわり目隠し

南面とは対照的に、北面と東面の窓は国道に面し、眺望が望めない環境でした。
また、店舗脇の通路はドギールームに向かう動線になっており、窓際の席のお客さまと視線が合ってしまい、気まずさを感じる場面もあったそうです。
そこで、選ばれたのが、下部だけでなく上部も開けられるプリーツスクリーンの〈アップダウンスタイル〉。カフェカーテンのように使えるため、見せたくない景色や外からの視線を遮りつつ、開放感も残せます。
「当初は、調光ロールスクリーン〈ハナリ〉を検討しましたが、抜け感を出したくて〈アップダウンスタイル〉に、生地は透け感が美しい〈リノン〉を選びました。一枚柔らかな布があるだけで、格段に居心地のよい空間になりますね」
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目線の高さにある景色をふんわり隠しつつ、少し目線を上げれば空が見えるのが嬉しい
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天然繊維のようなテクスチャーの〈リノン〉。シースルー生地ながらも、外からは窓際に座るお客さまの表情は見えない
厨房との視線をやわらげ、落ち着ける空間に

厨房と客席の間にある窓では、調理をするスタッフとお客さまの視線がよく合うのが気になっていました。
こちらの窓には、他の窓に取り付けたアイテムは選ばず、あえてウッドブラインドを採用。お互いの視線をやわらげつつ、スラット(はね)の間から中庭の木々の様子が感じられます。
「冬場は結露しやすいため、ファブリックアイテムではなく、ウッドブラインドにしました。ラダーテープの色は、アクセントとして黒も考えましたが、白の方がシュクルにしっくりなじむと思い、スラットと同系色にしました」
その仕上がりにスタッフのみなさまも喜んでいるそうです。
「これまでは、調理の慌ただしい様子がお客さまの視界に入りやすかったのですが、ウッドブラインドのおかげで落ち着ける空間になりました。スタッフも必要以上に視線を感じず、作業に集中できるようになりました」。
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たてに走る広幅のラダーテープがクラシカルな印象のウッドブラインド。スラットの間から木漏れ日が差し込む
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スラットの幅は35mmをチョイス。視線を遮りつつも厨房からは客席の様子は程よくうかがえる
窓まわりを整えたら、居心地よさがさらにアップ

以前は“窓にカーテンやブラインドなどを付けるのが苦手派”だった平野さん。数年前に自宅に窓まわりアイテムを設置してから意識が変わったといいます。
「窓辺にこだわって設計しているので、何かを付けてしまうと雰囲気を損ねると思っていました。でも、実際に取り入れてみると、空間が活き活きし、心地よさも加わることに気づきました」
こうした体験から、暑さや視線に悩んでいたシュクルでも導入を決定。お客さまがよりくつろげる空間へとアップデートしました。
さらに、平野さんは今回窓ごとの問題に合わせて窓まわりアイテムを選んだことで、新たな気づきがあったと振り返ります。
「一つのアイテムで統一するより、窓ごとの役割や問題に合わせて選んだ方が、心地よい空間になると実感しました。それに、色合いさえ揃えれば、自然になじんでくれるので、選びやすかったですね。これからも窓に合ったアイテムを提案していきたいと思います」
スタッフのみなさんに操作方法を伝え忘れていたものの、難なく操作できていたそう。「触れば分かりますよ〜と言われてしまいました」と微笑む平野さん
もうすぐ20年目を迎えるシュクル。やわらかな光が差し込む店内で、これからも訪れる方々にくつろぎのひとときを届けていきます。
- 平野 智美さん 「株式会社テスク」代表取締役。家の一部をカフェに変えて新しい生き方を創造する「家カフェプロジェクト」主宰。店舗を中心とした空間設計のほか、飲食や物販のプロデュースも手掛ける。『豊かな気持ちで居心地よく暮らす』をコンセプトとし、空間で過ごす全ての人に心地よく、そして長く愛されるデザインを提案している。





2025.10.20 公開