
パッチワークのように素材を紡いで
住まいの表情をつくる
二人目のお子さんが産まれるのを機に、新居を構えることにした建築家の小林佑輔さん。傾斜地に建つ築45年の物件を購入して、リノベーションしました。
今まではカーテンを愛用していましたが、外からの視線を調整するために、はじめて自邸にブラインドを採用したそうです。
今回は、完成したばかりのご自宅におうかがいして、一つひとつ丁寧に素材選びをされた空間とブラインドを見せていただきました。
素材や質感、デザインを調合して愛着の湧く住まいに

既存の建物は当時では珍しく建築士が設計したものでした。日当たりや目線の調整、各部屋のサイズ感など、この土地の特徴を捉えた良いプランだったと小林さんは言います。
その良さを最大限活かすべく、部屋の配置は変えずに間仕切り壁の配置と形状を見直して、回遊できるプランに変更。新たに窓2つと吹き抜けを設けて、光と風と視線が抜けるようにしました。
さらに、木やコンクリート、タイルなどを随所に散りばめて、それらが持つ自然な表情を引き出した住まいに仕上げました。
-
「個人的に白や木で統一された空間はどこか無理をしている印象があって。場所や住む人に合わせて多彩な素材を使う方が家のポイントになりますし、愛着も湧くと思うんです。
この家では素材が持つ要素や質感、デザインを調合するかのようにあしらいました」
また、同じフロアでありながらも、それぞれの窓から見える景色が異なります。空が見えたり、地面とつながっていたり、街並みが広がっていたりと、一度に色々な景色が楽しめるのも小林邸の魅力です。 -
「はじめてこの家を外から見たときに、2階に庭があってツツジが咲いていたんです。ジブリ映画のような少し不思議な佇まいがとても気に入りました」と小林さん
天然木の質感が表情豊かな空間に呼応する

小林邸のフォーカルポイントはLDKの一角にあるアトリエのエントランス。屋根の構造を現しにし、空間に奥行きと深みをもたらしています。古い屋根材に合わせて、壁には色の不均一さがあるラワン合板を選定。さらに、解体時に出てきたタイルとコンクリートの床もそのまま活かしました。
出入り口になる掃き出し窓とアトリエへと続く螺旋階段は、外の階段が中へと続いているように見える位置に配しました。古さと新しさ、外と中、住まいと仕事場をつなげてくれる場です。
日中は見晴らしが楽しめるものの、外からの視線も通してしまうため、夜間のプライバシー対策としてブラインドを設置することにしました。
採用したのは、壁材のラワン合板と相性の良いウッドブラインド<クレール>。その中でも、スラット(はね)の表面にワイヤーブラシ加工を施して、天然木本来の木目の立体感と風合いを引き出した<クラフト>シリーズを選定しました。素材の表情が溢れる空間に溶け込みます。
-
一枚一枚、職人の手で加工されたかのような<クラフト>シリーズ。光に当たると美しい陰影が生まれる
-
ヘッドボックス正面のスラット共通材によって、 “工業製品感”が抑えられて空間に調和する
- 「今回、<クレールタッチ>という機種を選びましたが、自動で下がってくれるので非常に便利ですね。日常の操作感として素晴らしいと思いました」と小林さん。意匠性だけでなく操作性も大満足だそうです。
-
毎日数回スラット(はね)の角度を調整しているのだとか。「ブラインドは上下方向に視線のコントロールができるので傾斜地にぴったりですね」
外からの見え方も意識して建物の完成度を高めてゆく

あえて剥き出しにした床の断面を眺めながら螺旋階段を下りていくと、アトリエがあります。床と天井の内装材を剥がしたコンクリートや解体の際に発見した無造作に削られた壁面が、独特な陰影と表情を生みます。
1階よりも外の階段との距離が近く、視線の調整用にウッドブラインドを設置しました。日中はたたみ上げることが多いので、窓枠から少し上の壁面に取り付けて、開口面積を確保しています。
-
たたみ代を考慮し、窓枠よりやや上に設置したウッドブラインド。オンライン会議の逆光防止&背景としても活躍している
-
この家に隣接した階段を往来する人からよく見えるアトリエの窓。手がけた物件の模型を並べてショーウィンドウ風に
外からの見え方も意識した小林さんは、エントランス、アトリエ、アトリエ横の多目的室に同じブラインドをしつらえました。
「外から見たときにエントランスとアトリエ、多目的室の窓が同時に見えるので、スラット(はね)の色が合っている方が美しいと思い、同じウッドブラインドで揃えました。屋根やタイルとも色味が近く、外観、内装ともに統一感が出ました」
-
外からの眺め。3つの窓すべて同じブラインドで揃え、外観をより美しく
-
コンクリート剥き出しの多目的室。粗々しいコンクリートとウッドブラインドの質感がマッチしている
-
コーナー窓にも美しく納まっている。2台のウッドブラインドは見た目のバランスを考慮し、寸法を割り出した
ハニカムスクリーンが安眠と心地よい目覚めを叶える

寝室は家族4人分のベッドが並ぶシンプルな空間です。地下にあたる位置のため、少しひんやりとした空気が流れます。サッシはすべて新しいものに交換しましたが、より高い断熱効果を期待してハニカムスクリーンを設置しました。
ハニカムスクリーンは、その名の通りハチの巣状のセルがたてに連なった立体構造のスクリーンです。ハニカム形状がつくり出す空気層が断熱壁となり、一年を通して快適な室温を保ちます。
「ハニカムスクリーンを設置する前と後では比べ物にならないくらい暖かいです。遮光生地とレース生地を組み合わせた<ツインスタイル>にして正解でした。1台で寝室の窓に必要な機能を満たしているので、使い勝手が良いです。繊細なシースルー生地を通した朝の光は柔らかく、家族も気持ち良く起きてくれます」
-
日中は上部のシースルー生地を下ろして室内に優しい光を届ける
-
夜間は下部の遮光生地を上げて外からの光を遮り、睡眠環境を整える
寝室の窓は横幅が225cmと広めですが、ニチベイのハニカムスクリーン<レフィーナ>は幅300cmまで製作可能(操作方式や面積で制限あり)なため、1台で納められました。見た目がすっきりするだけでなく、操作も1回で済みます。
白いスラットが光や影の表情を暮らしにもたらす

LDKとつながる廊下の先にはプレイルームがあります。他の部屋から少し離れた位置にあり、屋根の形状も相まって小さなおうちのよう。部屋の両側には窓がしつらえてあり、中庭に面した窓からはリビングで過ごす家族の様子がうかがえます。
もう一方の窓は団地と公園に面していて昼夜問わず人の往来が多いため、ウッドブラインドを設置しました。
他の窓は<クラフト>シリーズでまとめていますが、この窓だけはマットな表情の<ベーシック>シリーズを選定しています。
「プレイルームは壁と天井の仕上げに合わせて、すっきりと白く塗装されたブラインドを選びました。白いスラット(はね)は、ほんの少し動かしただけでも光の反射が変化するのでおもしろいですね。光や影の変化を感じたくて頻繁に操作しています」
-
天然木を丁寧に塗装した<ベーシック>シリーズ。天井と壁の色に合わせて混じり気のない白の<スターホワイト>を採用した
-
お子さんが遊ぶ場所は、操作コードを<コードクリップ>でまとめて安全対策をしている
ウッドブラインドとハニカムスクリーンの設置を自ら行った小林さん。想像以上に取り付けが簡単で驚いたそうです。
「本来、長いものを取り付けるのは難しいですが、先に取り付けたブラケット(取付金具)の手前のツメにブラインド上部のボックスをひっかける仕組みになっていて、とても施工がしやすかったです。非常に良くできているなと感心しました」
パッチワークのように素材をあしらった小林邸。床、壁、天井、そしてブラインド。それぞれの素材が一つにまとまり、日々の暮らしを心地良く、やさしく包み込んでいました。
- 小林佑輔さん 「tombow architects(トンボアーキテクツ)」主宰。建築設計を主軸に幅広くデザインを手がける。複雑な条件や環境を紐解き、本質を問い直す設計を行なっている
Photo by Akiko Osaki/Written by なるほどブラインド編集部
2025.04.24 公開