
インテリアのプロから学ぶ
窓まわりアイテムの選び方
インテリアのプロは普段どのように窓まわりアイテムを決めているのか気になりますよね。
今回はインテリアデザイン事務所「an.a studio(アナスタジオ)」の大場渚子さんと斉藤敦子さんに窓まわりの選定方法について伺いました。
住まい手が自分らしく快適に過ごせるお手伝いを
不動産からインテリアデザインまでトータルで行う「an.a studio(アナスタジオ)」。代表の大場さんと斉藤さんは海外生活とグローバル企業での経験を活かした空間提案をしています。デザインコンセプトは「住まい手がカスタマイズできるフレキシブルな空間であること」。海外での経験から生まれた発想だと大場さんは言います。
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「私は以前、イタリアとアメリカで暮らしていました。イタリアでは建て替えはせず、築300年くらいの建物を自分好みにフルリノベーションして、そこに代々引き継いできたテイストの異なる家具をしつらえるのが一般的でしたね。アメリカでは壁や家具を塗るなどのDIYが日常的に行う文化でした。
だからこそ、すべてつくり込むのではなく、お客さまが新しい住まいでの生活をスタートされてからも自由に空間をアレンジしていけるように、あえてシンプルで上質な空間づくりを心がけています。お客さまが自分らしく快適に過ごせるお手伝いをすることが私たちのモットーです」 -
左が大場さんで右が斉藤さん。お二人とも海外生活が長く、海外のインテリアに造詣が深い
豊かな緑の中に佇むシックモダンな保養所

アナスタジオさんが新しくインテリアを手掛けたのは某企業の保養所。色とりどりの木々に囲まれ、遠くには富士山の頂きが望めます。
外観の色選定にも携わったお二人。周囲の緑の美しさを引き立てられるように黒を提案したのだとか。中央にある紫のバスケットコートも良いアクセントになっています。
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少し高台に移動すると富士山が見える最高のロケーション
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「バスケットコートの色はお施主さまに関係の深いカラーを提案してみました」と斉藤さん
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大きな窓と立派な梁が印象的な室内。景色を引き立てるためシンプルなしつらえにしている
室内は天然木をふんだんに使用し、温もり溢れる空間。壁一面に配された大きな窓からは、富士周辺のパノラミックな眺めが広がります。1階吹き抜けのパーティールームは食事やスポーツ観戦と色々な用途に使用するため、キャスター付きの家具にして空間をフレキシブルに使えるようにしました。
また、大勢で調理をして食事を楽しみたいという要望があり、厨房は広々としたステンレス仕上げのキッチンを採用しました。他にも旅館さながらの浴室やトレーニングルーム、外にはキャンプやバーベキューが行える東屋も完備。皆さんで談笑しながら過ごしている光景が目に浮かびます。
プライバシーと防犯と眺望を叶えるバーチカルブラインド

パーティールームの大きな開口部にはバーチカルブラインドが設置されています。すらりと垂直に伸びるラインが窓を一層高く見せています。
当初、お施主さまは窓まわりアイテムは不要だと考えられていましたが、斉藤さんはプライバシーと防犯の観点からバーチカルブラインドの設置をおすすめしたそうです。
「こちらの保養所は割と道路の近くに建っているので、外からの視線が気になるかなと。それに誰も利用していないときは、閉められた方が安心ですよね。でも、滞在時は景色を楽しみたいから開けておきたい……。そう考えてたどり着いたのがバーチカルブラインドでした。
別の物件でも景色は隠したくないけれども、夜になると怖さを感じる場所にはロールスクリーンやブラインドを設置しています。メカモノは1台で使い方を工夫できるのが良いですね」
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滞在時はブラインドを開けて景色を存分に取り入れる
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留守のときはブラインドを閉めてしっかりと防犯対策。床や家具の日焼けも防げる
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採用したのはバーチカルブラインド「アルペジオ」の多配色生地「エルデ」シリーズ。リネンの風合いとグレイッシュカラーが上品で洗練されたインテリアに調和します。操作方式は長いコードが垂れ下がらないバトン式を選定。1本の操作バトンでルーバーの開閉と回転ができ、慣れてない方でも直感的に操作可能です。
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色は「ムーングレイ」。柔らかな手触りの生地はナチュラルなインテリアとも好相性
浴室の美しさを保つ秘密は“白いブラインド”

黒を基調にしたシックな浴室は、絶景を眺めながら湯浴みが楽しめます。窓を開けると爽やかな風が感じられ、露天風呂気分を味わえます。
周囲に別荘が数軒隣接していることもあり、窓にはウッドブラインド「クレール防炎・耐水タイプ」を選定しました。ヘッドボックス内部の金属部品は、錆に強いステンレスを使用しているため、浴室でも安心して使用できます。
スラット(ブラインドのはね)は樹脂製で、表面が平滑で掃除しやすく、木材のように朽ちることもありません。
「浴室にはウッドを使っているので、窓にも木目調のブラインドを選びました。スラットの色は天井や浴槽のタイルに合わせて黒を検討していましたが、カルキの跡を避けたくて白にしました」と斉藤さん。使用後の美しさまで配慮した色選定はさすがです。
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遠くの景色をのんびりと眺めながらの湯浴みは至福のひととき。日常の疲れが癒やされる
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スラットは「ベーシックFR」シリーズのナチュラルホワイト。レフ板のように光を拡散して浴室全体に光がまわる
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「よこ型の幅広いスラットで上からの視線を遮るのは理に叶っていますよね」と大場さん
感覚と環境に応じた窓まわりアイテムを
住宅から宿泊施設まで幅広く手掛けているお二人。窓まわりアイテムの選定の方法についてうかがいました。
「お客さまによっては光が少しでも入ってくると寝られないという方もいらっしゃるので、光に対してどのような感覚をお持ちなのかを先にヒアリングします。光に対して寛容な方であれば、少し冒険して透け感のある生地を提案します。あとは、毎日使うものですから環境やお客さまの感覚に応じたストレスのかからない操作方式をおすすめしていますね」と斉藤さん。
加えて、大場さんは生地と色の選び方についてこう話します。
「窓まわりアイテムの生地や色は、その建物の壁と床、光に調和するものを選びます。壁材と床材と窓まわりアイテムの生地サンプルは必ず並べて色を決めていますね。さらに、事務所と現地では光が異なるので、現場に生地サンプルを持っていき、窓の近くで見え方を確認します。空間の完成度を高めるために欠かせない作業です」。
その家はどういった環境にあるのか、光や外からの視線はどれほど許容できるのか、自分はどう暮らしていきたいのか……。自分らしい快適な住まいづくりには、そうした小さな気づきを積み重ねていくことが大切なのかもしれません。
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大場渚子さん・
斉藤敦子さん
an.a studio(アナスタジオ)主宰。不動産の売却、物件探しのサポートから住宅やオフィス、商業施設のデザインリノベーションと幅広くサービスを展開。「お客さまが自分らしく快適に過ごせるお手伝いをすること」をモットーとし、お客さまに寄り添いながら、インテリアのプロとして暮らしの変化に応じたデザインを提案している。
Photo by Akiko Osaki / Written by Naoko Hashiguchi
2025.2.20 公開